雑記帳

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メアリー・スーを殺して(著:乙一、中田永一、山白朝子、越前魔太郎 解説:安達寛高)

   

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このページはネタばれを含む可能性があります。ご了承の上、ご覧ください。

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異色アンソロジー

乙一氏2本、中田永一氏2本、山白朝子氏2本、越前魔太郎氏1本の全7本の短編集。
全作品を安達寛高氏が解説してます。
ミステリー、ホラーなどジャンル様々なのですが、何より解説を含めた5名、全員中の人が同じ(同一人物)という異色アンソロジー。

各編について

愛すべき猿の日記(乙一)

母親から父の形見として送られてきたインク瓶を手にした大学生のお話。
そのインク瓶のインクを使うためにペンと日記を買い、その日記を部屋に置くのに見栄えがよくなるようにと本を買いと、徐々に人間らしい生活になっていく。

そんなにうまいこといかないし、単純に生きることなんてそうそうできるものではないと思うのですが、ちょっとしたきっかけで何か変わっていけるのかなと思える作品でした。

山羊座の友人(乙一)

主人公の部屋のベランダには時々おかしなものが引っかかる。
今回引っかかったのは、同じ学校、同じ学年の生徒が殺され、またその犯人も同学年の生徒、そして自供後に自殺したという新聞記事。
殺人が起きた夜、殺人犯のクラスメイトと遭遇した主人公が自殺を阻止しようとするお話。

乙一氏らしい作品と感じました。
ただ、以前よりはオチが読めてしまったかなと思います。
逆に読めるからこそ、もどかしい感じもあって、それが狙いなのかもしれません。
ほんのちょっと、何かが違えば、全然違う展開になっただろうというのがまたらしいと感じたところかもしれないです。

宗像くんと万年筆事件(中田永一)

クラスメイトの万年筆が無くなった騒動が起き、その窃盗犯とされてしまった少女とその無実を晴らそうと学級裁判を起こした宗像くんのお話。

宗像くんが行動力があって、すごい人のように見えて、実は不安を抱えながら勇気を持って学級裁判を遣り通したというのが良かったです。
見栄というか、不安とか恐怖を押し殺して、平気そうに強そうにしてるのに弱いです。(強がってるという感じを微塵も見せずに。)
永遠に片思いしてるように、相手を思い出したりするあたり、中田氏らしいなと思いました。

メアリー・スーを殺して(中田永一)

二次創作をしている主人公が、作品内のメアリー・スーを殺すために、妄想で描く姿を現実にするために努力をし、現実を充実したものにしていくというお話。
現実が充実し、次第に二次創作から離れていく。
自分に対するコンプレックスから二次創作をしていたので、そうなってくのは必然。
その後、オリジナルで小説を書かないかという話を持ちかけられる。

メアリー・スーを悪と考える傾向が強いところ、最後の最後でひっくり返すのが良かったです。
オリジナルの創作なんて、その人の中から創り出されるのだから、大なり小なりその人の理想とか妄想が混じるものですから。
最後、前に進む一歩を踏み出す形なのがまた読後感が良いです。

トランシーバー(山白朝子)

震災により、妻子を失った主人公。
泥酔したときだけ、生前息子と遊んだトランシーバーで息子と会話ができるという夢を見、その夢に縋り、立ち直っていくお話。

上記だけ見ると、トランシーバーでのやり取りで立ち直っていったように見えますが、そうではなく、新たに支えとなる人と出会い、その人との交流によってというのが大きなところ。
ただ、それでも立ち直っていくまでの過程でトランシーバーで息子と会話できることがかろうじて生きる糧になっていたのは確か。
最後でのオチが良いような、でも、返事してくれないトランシーバーにずっと話しかけ続けてたと考えるとそれはそれでちょっと悲しいかもです。

ある印刷物の行方(山白朝子)

とある研究施設で焼却炉操作のバイトをしていた主人公のお話。

なにを焼却しているのかを教えられることなく、ただ簡単な操作のみで高額な報酬のアルバイト。
研究についてわかったのは3Dプリンターの研究であるということ。
読者はおおよそ見当がつくと思いますが、なかなかぞわぞわとさせてくれました。
現実でも3Dプリンターではないですが、近しい技術の研究はされてますし、それが倫理的にどうかというのはいつの時代でも問題になりそうです。

エヴァ・マリー・クロス(越前魔太郎)

ある富豪の死について調べてるうちに「人体楽器」というものを知ってしまった雑誌記者の話。

「人体楽器」単語から想像がつくとおりのものでしたが、これは小説ならではのものと感じました。
実際の絵になると、少々音を奏でるものに見せるのは難しい気がします。
文字で読み、想像するからこそ、不都合な部分を削ぎ落とし、楽器となった人間が絵になるのかなと。
タイトルのエヴァ・マリー・クロスは主人公の妻の名前。
全体を通してそこまでこのタイトルを意識しなかったのですが、読み終わって考えるとエヴァがいくつものきっかけとなっていて、そこを意識して読むとまた面白いと思いました。
こちらも先の印刷物と同様、ある程度先の展開が見えつつもぞわぞわとさせてくれました。

まとめ

名義を分けているだけあり、展開などがそれぞれ「らしい」感じで面白かったです。
エヴァ・マリー・クロスが読んでて一番引き込まれました。
同考えても足を踏み込んではいけないところに少しずつ少しずつ踏み込んでいく感じが良かったです。

色味の違う作品が集まっているので、全編を楽しめるかは人を選ぶところはあるかなと思います。
全編を同じ人が書いているというのが面白いところで、それを楽しめる1冊だと思います。

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