私は存在が空気(著:中田永一)
2018/06/10
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超能力者×恋物語
瞬間移動、存在感を消すといった超能力者の恋物語6編を収録した短編集。
各編について
少年ジャンパー
ジャンプすると一度行ったことのある場所へ瞬間移動できる少年と、東京に彼氏のいる女の子との話。
少年と女の子は福岡県在住。
電車のホームに落ちてしまった女の子を主人公の少年が瞬間移動を使って助けたことをきっかけに東京にいる彼氏の浮気疑念払拭の手伝いをすることに。
少年が女の子に惹かれていくものの、彼氏あり。
しかも、その彼氏が浮気をしていないことを確認する手伝いをするというのがまたなんとも切ないです。
終盤の彼女への誕生日プレゼントの演出はとても良かったです。
なんとういか、相手を想っての「好き」ってそういうものと思いました。
最終的に彼の恋は成就しないものの、彼自身とても強くなり、前を向くようになり、良い終わり方だと思います。
私は存在が空気
存在感を消せる少女が好きな人のためにその能力を駆使して、連続婦女暴行事件の真相を追うお話。
この作品は多くを書いてしまうとネタバレもネタバレになるので、控えますが、これもひとつの「好き」の形で良いと思いました。
想いを伝えるのが全てではないということで。
恋する交差点
スクランブル交差点を手を繋いで渡ると気づくと違う人の手を握っているという特殊能力(?)が発動するカップルの話。
6ページととても短いです。
何度、他の人の手を握ってても相手を見つけ出し、また繋ぎなおして交差点を渡る。
短いはずの交差点が荒れた海を渡ってるようでした。
スモールライト・アドベンチャー
いわゆるあのスモールライトで小さくなった少年。
その少年が気になる女の子のスカートを除こうとして始まった一夜の冒険。
女の子が誘拐されてしまい、それを救助するお話。
体が小さくなったからこそ見える景色などの描写が良かったです。
最後の一文がとても良いオチになってると思いました。
ファイアスターター湯川さん
熱を思い通りのところに発生させることができる女性とその女性が住むことになった木造アパートの管理人のお話。
熱を発生させる、熱量が大きすぎると発火になるということと、木造アパートということから、アパートの火事を心配するという感じに始まり、、、かなり大きく、重い内容のお話になりました。
本当にええ!?という感じの展開でした。
他の話よりもやや大きめです。
雪を溶かしてく描写がその能力をよくあらわしてるように感じました。ちょっと幻想的な想像もできたりもして。
サイキック人生
サイコキネシス家系の女子高生が教室で幽霊騒ぎを起こしたことをきっかけに妹を失った少年と仲を深めるお話。
サイコキネシスといっても、念力ではなく、透明な腕が2本あり、それらで物を動かしたり、人に触れたりできるというもの。
一族の掟で、他人に能力のことを知られてしまった場合は口封じに殺さなくてはならない。
しかし、配偶者と配偶者候補は例外となる。
高校生らしい、少し考えが幼かったりする部分がこのお話を作り上げてるかなと。
そのため、全体的に登場人物の考えが足りずに行動に走ってしまう部分が多く、その辺を面白いと思えるかどうかで好き嫌いがわかれそうと感じました。
私は微笑ましくて好きですけどね。程度にもよりますが、このくらいは全然。
この話を通して、主人公の女の子が少し成長したようにも見え、そこも良かったです。
まとめ
全体的に読みやすく、想像もしやすくて面白かったです。
読後感ももやもやするのがなくて、明示されてなくてもその後が悪い展開にはならないのだろうなと。
超能力というのに焦点があたりがちですが、超能力に関わらず、人が人を好きになるのって、自分をちゃんと見てくれた時なのかななんて思いました。
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